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Japan Culture
私の好きな”かたちと風景” ⑦二子玉川ライズ ルーフガーデン
私の好きな”かたちと風景” ⑦二子玉川ライズ ルーフガーデン
近年、従来の人気をさらに高めている二子玉川駅。その中核施設として、話題を提供し続けているのが二子玉川ライズである。デザイン監修はコンラン&パートナーズ、設計は日建設計、アール・アイ・エー、東急設計コンサルタント設計共同企業体、施工は鹿島建設、ランドスケープ計画はランドスケープ・プラス、二期工事は2015年6月に終えている。今回は、『商店建築』(商店建築社,2015年11月号)の「特別企画1/商空間のルーフトップデザイン」でも紹介されたランドスケープのうち、主にルーフガーデンに注目したい。
従来ビル上の庭園は、緑があるだけで満足しがちである。けれども、ライズは再開発だからこそ生み出された外部空間で、都市でしかできない自然のあり方を創出し、野山を散策する遊歩道のような感覚を引き起こしてくれる。
複数のビルの階層の違いで生じた外部空間を地形のように扱い、多種多様な植物に触れながら回遊できる散歩道。自然の雑木林や都市公園では体感できない、新たな都市の自然のあり方である。駅からリボンストリートを経て陸橋を渡ると上がって行く階段、両脇に立つ建物の階層やずれで生じるテラス、両脇の建物を繋ぐ陸橋、屋上、塔屋と塔屋の隙間などを巧みに利用した遊歩道。散策中には、30階建てのタワー、塔屋、谷状のリボンストリート、駅などの風景が見え隠れする。
駅からリボンストリートを歩き、両脇に雛壇上に階層が広がり、視界が開ける様子は、山の麓から谷間、谷間から頂に向かっていくようでもある。常にそこには、植物や水路が組み込まれている。樹木の樹高など植物の特性を利用した視界の開閉とこれによる陰影は心地良く、パラペットや壁の根元を隠すことで建物の存在感は軽減されている。通れるのか、何があるのか、行けるのか、そんな気持ちを引き起こさせてくれる。
建物内に入り、再びルーフガーデンに戻るという流れもある。さらに、滞留できる隠れ家的な場が各所に設けられている。建物にも外部通路にアルコーブ(壁面の一部を後退させたくぼみ)が設けられているので探してみるのもいい。商業施設にとって、こうした滞留できる場は大切である。カフェなどと同じで、休憩を挟んで再び購買意欲を高める効果もあるためだ。
ルーフガーデンは、低層部でも周辺の土地よりも高い位置になるので、駅周辺を眺望するための場所を探す散歩ができるという楽しさがある。
参考:『商店建築』(商店建築社,2015年11月号)、『新建築』(新建築社,2015年9月号)
博士(工学)、有限会社花野果 代表取締役
二村 悟 Satoru Nimura
受賞歴:O-CHAパイオニア学術研究奨励賞 受賞、第47回SDA賞 サインデザイン奨励賞・九州地区賞特別賞 受賞、第5回辻静雄食文化賞 受賞ほか
静岡県掛川市 (旧大東町) 生まれ。博士(工学) (東京大学)。
東海大学大学院博士課程前期修了。元・静岡県立大学食品栄養科学部 客員准教授。
現在は、有限会社花野果 代表取締役、専門学校ICSカレッジオブアーツ 非常勤講師、日本大学生物資源科学部森林資源科学科 研究員・非常勤講師、工学院大学総合研究所 客員研究員。
主な著書:水と生きる建築土木遺産 彰国社 2016、日本の産業遺産図鑑 平凡社 2014、食と建築土木 LIXIL出版 2013、図説台湾都市物語 河出書房新社 2010
花野果 HANAYAKA https://tatemonoxxx.amebaownd.com/