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授賞案件
「日本クリエイション大賞2022」選考結果のご報告
「日本クリエイション大賞」は、一般財団法人日本ファッション協会が行っている、製品、技術、芸術・文化活動、地域振興、環境、福祉など、ジャンルを問わずクリエイティブな視点で生活文化の向上に貢献し、次代を切り拓いた人物や事象などを表彰対象とする顕彰事業です。今年度は、事務局推薦も含めた100件の推薦案件の中から40案件を懸賞制度委員会に提案。3回の委員会での審議の結果、大賞1件と各賞として【インフラ技術賞】【よりどころ賞】【きらり技術賞】の3件を選考しました。
「日本クリエイション大賞2022」授賞案件
【大 賞】株式会社ツインバード(新潟県燕市)
「燕三条の職人気質がつむいだ、安全で環境に優しい冷却システム。ワクチン接種を支える」
一般的な冷蔵庫で使われているコンプレッサー式とは異なり、冷媒に自然界に存在する安全なヘリウムガスを使用した、環境に優しい冷却システム「FPSC(フリーピストン・スターリングクーラー)」は、新潟県燕市に本社を置くツインバードが、2003年に世界に先駆けて商用量産化に成功した独自技術である。極低温領域への厳密な温度制御に加え、低消費電力、また軽量コンパクトで振動にも強いため、可搬性にも優れている。この技術をベースにつくられた宇宙実験用冷凍冷蔵庫は、国際宇宙ステーションの日本実験棟で使われ、FPSCを搭載した冷凍機器は医薬・バイオ、半導体製造装置の冷却システムなどにも活用されている。
そして、コロナ禍の2020年、厳格な温度管理が必要とされる新型コロナウイルスワクチンを、全国各地の接種会場に届ける運搬庫として選ばれ、ワクチン運搬用に改良された「ディープフリーザー」を、2021年2月までに厚生労働省に5000台、4月には製薬会社に5000台完納した。同社の従来の生産能力は月産300台から400台。短期間でそれを大きく上回る10倍の生産体制を整えるため、4億円を投資して工場を増設、人員も50名補強、さらに地元約30社の協力企業の承諾も取り付けた。自動車エンジンの10倍もの精度を要するFPSCを搭載したディープフリーザーの開発と量産は、新潟、燕三条地域の加工業者の技術力とネットワークにも支えられている。
【インフラ技術賞】西日本高速道路株式会社/三井住友建設株式会社
「鉄筋を使わない“さびない橋”、世界で初めて高速道路で実用化」
徳島自動車道の「別埜谷橋(べっそだにばし)」(徳島県阿波市)は、西日本高速道路株式会社と三井住友建設株式会社が共同開発し、世界で初めて高速道路で実用化した超高耐久橋梁「Dura-BridgeⓇ」。2021年1月に完成したこの橋は、コンクリートの補強材として使われる鉄筋やPC鋼材に替わり、腐食しない新材料を用いた“さびない橋”である。直径7.4㎜のロッドでも自動車5台分、約8トンを吊り上げることができ、コンクリート内でも劣化しない耐アルカリ性を有する「アラミド繊維(FRPロッド)」が緊張材として用いられ、凍結防止剤や沿岸部の塩分を多く含んだ風によって、コンクリート内部の鉄筋などが腐食し、コンクリート片の崩落を引き起こすということがない。日本全国にはおよそ72万本の橋梁構造物があり、その50%に何らかの補修が必要とされる。“さびない橋”を実現したDura-Bridgeの技術が、補修費の削減など、コンクリート構造物のメンテナンスフリーにつながるものとして大きく期待されている。
【よりどころ賞】一般社団法人ともしびatだんだん(東京都大田区)
「八百屋で始めた“こども食堂”、地域と共に歩み続けて10年」
2012年、東京都大田区で元居酒屋の店舗を活用して八百屋を営んでいた近藤博子さんが、家庭の事情で十分な食事を摂ることができない子どもの話を聞き、「おなかをすかせた近所の子に、ちょっと何か食べさせてあげたい」という思いから始めた“こども食堂”。子ども一人でも気軽に入れるようにと名付けられ、低価格で夕食を提供した。それから10年、地域の子どもたちに無料や低価格で食事を提供する“こども食堂”は、コロナやさまざまな自然災害のたびに増え、今では全国で7300カ所以上にのぼり、社会インフラとして認識されるようになるとともに、地域の交流拠点としての役割も果たしている。近藤さんが「気まぐれ八百屋だんだん」で始めたこども食堂も、赤ちゃん連れのお母さんやお年寄りなど誰もが安心できる食を提供する場として、さらに、「こども天国」などのイベントやさまざまな講座、おはなし会、勉強会などを開催する場として、地域にとってなくてはならない“よりどころ”となっている。
【きらり技術賞】YSテック株式会社(大阪市吹田市)
「世界シェア100%、1000℃の高熱に耐えるバーコードラベル」
「ニッチな分野におけるオンリーワン製品を追求する」を基本精神とするYSテック株式会社は、1000℃という高温状態にある鉄鋼製品に、直接貼り付けることができる耐熱バーコードラベルで、世界シェア100%というまさしく“グローバルニッチトップ”企業だ。常温の金属を熱加工する場合は、1200℃となる製品に貼り付けても燃えない。しかも室温に下がっても文字やバーコードが鮮明なまま剝がれない。バーコードラベルは、今や製品の製造・品質・商品管理に欠かせないが、同社のラベルは、国内のみならず欧米や中国、インドなどおよそ30ヶ国、500社で使われている。鉄鋼関連だけでなく、セラミックや電子機器、金型のほか、製菓会社で菓子を焼く際に高温で使うトレーなど、高温環境下での加工が必要なさまざまな領域で、新たなニーズが生れている。同社は多様化するニーズに丁寧にこたえ、顧客の課題を一つひとつ解決し、これからもオンリーワン製品を生み出し続けるに違いない。