授賞案件

「日本クリエイション大賞2021」選考結果のご報告

「日本クリエイション大賞」は、一般財団法人日本ファッション協会が行っている、製品、技術、芸術・文化活動、地域振興、環境、福祉など、ジャンルを問わずクリエイティブな視点で生活文化の向上に貢献し、次代を切り拓いた人物や事象などを表彰対象とする顕彰事業です。今年度は、事務局推薦も含めた112件の推薦案件の中から44案件を懸賞制度委員会に提案。3回の委員会での審議の結果、大賞1件と各賞として【オンリーワン技術賞】【福島から未来へ賞】【水産業革新賞】の3件を選考いたしました。

 

「日本クリエイション大賞2021」授賞案件

【大 賞】テルモ株式会社

「創立100年、医療を通じ社会に貢献」

人類史に残る感染症「スペインかぜ」がピークを迎えた1920年。その翌年、1921年に、テルモ株式会社は、第一次世界大戦の影響で輸入が途絶えた体温計の国産化を目指して、北里柴三郎博士をはじめとする医師らが発起人となって設立された。奇しくも、世界が新型コロナウイルス感染症の脅威にさらされた2021年、創立100周年を迎えた。

重症化した新型コロナウイルス感染症の治療において、大きな役割を果たしている医療機器の一つ「体外式膜型人工肺(ECMO)」の国内シェア7割を占めるのが、同社だ。需要の増加に備えて、2020年1月にはすでにECMOの部材の調達を開始し、政府から増産の要請のあった4月には平時の2倍の生産が可能な体制を整えていたという。

EBS_5
重症呼吸不全などの患者を救うテルモのECMO

これまでの100年、同社は、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスの提供によって、医療の発展に貢献してきた。

カテーテル治療においては、血管への挿入部から病変部までの道筋を作る「アクセス」領域の製品で世界トップシェアを誇り、カテーテルの挿入部を太ももの付け根から、患者の負担が少ない手首の血管への挿入に変えるTRIを普及させた。テルモは、これからもさまざまな医療課題に対し革新的な技術とソリューションで応え、医療を通じ社会に貢献し続けていくに違いない。

 

wiyer
カテーテルを挿入するための道筋をつくるガイドワイヤー

 

【オンリーワン技術賞】株式会社ティ・ディ・シー(宮城県利府町)

「世界最高レベルの超精密加工で顧客の技術課題を解決」

株式会社ティ・ディ・シーは、さまざまな素材を表面の粗さ(Ra)1ナノメートル以下(ナノは10億分の1)の精度で磨き上げることができる。平面だけでなく、曲面、球面など複雑な形状のものを「超」がつく精度で仕上げる世界最高水準の研磨技術は、幅広い分野で活かされ、取引先は国内外でおよそ4000社に及ぶ。超精密研磨では一点ものの依頼が多いが、同社は顧客からの相談を断らない。高い技術力と創意工夫、粘り強さで顧客の課題を解決してきた。大震災による被災後も、世界トップレベルの技術者を育成し、産学官連携など外部との連携も積極的に行うことで新技術開発を行ってきた。
同社は探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」で採取した物質を収容するサンプルキャッチャーの精密研磨を手掛けた。「はやぶさ2」が地球に未知の物質を持ち帰る偉業に貢献したのだ。2024年の火星衛星探査計画への参加も決まっている。

TDC_mirrer
ティ・ディ・シーの超精密鏡面加工技術。様々な材質・形状に対してナノオーダーの高品質を実現する

 

【福島から未来へ賞】株式会社ウッドコア(福島県浪江町)

「国産材を活かした大震災からの復興と脱炭素化の推進」

福島県の森林面積は97万ヘクタールを超え、全国第4位の広さを持つが、東日本大震災と原子力発電所の事故により大きな被害を受け、木材生産額も減少した。森林整備面積は大震災前の約半分となり、荒廃森林が増加している。今なお大きな課題である福島の森林再生と林業振興を目指して、2021年10月、浪江町に「福島高度集成材製造センター(略称FLAM=エフラム)」が完成した。板を結合して安定した強度や品質を保つ集成材の国内最大規模の製造施設で、県産のスギやカラマツなどの原木から年間1万5000㎥の集成材を生産する。大規模建築用の柱や梁に使われるもので、首都圏の木造高層ビルなどでの使用が想定されている。運営を担う株式会社ウッドコアでは、二酸化炭素を吸収して貯蔵する森林を手入れし育てる林業再生を通して、福島県からカーボンニュートラル社会の実現を後押ししていく。

FLAM
福島県浪江町に建設された福島高度集成材製造センター(FLAM)

 

【水産業革新賞】一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(宮城県石巻市)

「震災から10年、水産業をかっこいい職業に」

日本では、平成の30年間で水産業に従事する人が約6割減少し、漁業生産量もおよそ半分に減った。一方、世界では漁業生産量が、この30年間で2倍に増えている。
石巻で祖父、父と三代にわたって漁師をしていた阿部勝太氏は、25歳で大震災に遭い、すべてを失った。それでも海で働きたいという思いは変わらず、ただ復興させるだけではなく、漁業をかっこいい職業に変えていきたいと願うようになる。同じ想いを抱く漁師や魚屋が集い、2014年、阿部氏を代表とする若手水産事業者の団体「フィッシャーマン・ジャパン」を立ち上げた。2024年までに漁師、加工業者、魚屋だけでなく、料理人やクリエイターなど水産業に関わるフィッシャーマンを1000人育て、水産業のイメージをかっこよくて、稼げて、革新的な「新3K」に変え、次世代へと続く未来の水産業の形を提案している。

FJ_mr.abe
水産業を「かっこいい」職業に!代表理事の阿部勝太氏
  • mixiチェック
↑