設立趣意書
21世紀を間近に控えた今、国民の意識や価値観は、一層の多様化・個性化の進展をみせ、経済性・効率性・機能性の重視から、豊かさ・うるおい・美しさの重視へと著しい変貌を遂げつつあります。一方、我が国は、国際社会の一員としての自覚を強く求められており、「日本は世界にとってどのような肯定的な意味をもつ国なのか」を自問し、世に明らかにすることは喫緊の課題であります。
文化や技術に関する情報を吸収することのみが多かった我が国が、新たな生活文化を創出し、提示していくことは、国内においては、経済力に見合ったゆとりと豊かさに満ちた国民生活の実現に、対外的には、我が国の「顔」としての文化的アイデンティティの確立に寄与するものであります。
こうした中で、ファッションは、「多くの人々にある一定の期間共感をもって受け入れられた生活様式」として定義され、単に衣服にとどまらず、食、住、サービスを含む生活文化全般にわたる新たな価値を有するものとして、認識されつつあります。すなわち、デザインされたものが生活者の共感・共鳴によって一層の広がりをもって社会に普及してファッションとなり、さらに伝承されていく過程で、我が国固有の生活文化が確立されていくと考えられます。
ファッションの向上は、科学技術、人文科学、芸術の向上と密接不可分の関係をもち、国民生活の充実、国際相互理解の増進、地域の活性化等に資するものであります。このため、製造、建設、エネルギー、流通、情報、サービス、金融等を含む全ての分野の関係者が協力し、分野の境界を超えた今までにない組織と活動によって各界・各層の英和を集め、これを推進することが肝要であります。
以上のような認識のもと、我が国のファッションの向上を図るため、国際交流の推進、調査研究、研修会の開催、研究に対する助成等を行い、ファッションの源となるデザインに関する知識及び思想の総合的な普及啓発を推進し、もって国民の生活文化の向上発展に寄与することを目的として、ここに「財団法人日本ファッション協会」を設立しようとするものであります。
平成2年3月14日 設立発起人会